開催前から擦った揉んだしていた函館市議会の「有料老人ホーム問題調査特別委員会」
(以下「特別委員会」という)の調査結果が27日の定例会本会議で黒島委員長から報告
されたとのこと。
北海道新聞に、
― 調査の最大の焦点となったのは、法的に原則認められない有料老人ホーム計画に関し
て井上博司前市長が「再検討を部下に指示した」と西尾正範市長(元助役)が指摘した、
2006年7月20日の市長室でのやりとり。井上氏からの再検討指示の有無について、
市側の答弁は「明確な言葉での指示ではなかった。指示とも投げかけとも取れる表現だ
った」とし、当初の「指示はなかった」から変わった。
また、有料老人ホームを計画していたH社の要求について市側は「不当な要求があっ
た際に報告する庁内の取り決めに該当する状況だった」と答弁。業者側の市への働きか
けの強さをうかがわせた。 ―
との記事が掲載され、
さらに<解説>では、
― 問題の発端となった2006年7月20日の市長室でのやりとりに関して、焦点の前
市長による「再検討の指示」があったかどうかの真相は明確にはならなかった。「指示
とも投げかけともいずれとも取れる表現だった」との市側答弁からは、むしろ白黒をつ
けられない、あいまいなものだった印象も強まった。 ―
と触れていた。
昨年の10月から計8回開かれた特別委員会での実質審議は1月に入ってからの3回だ
け、それも参考人招致はせず調査対象は行政(市)側のみに止まったのだから、こういう
結果も宣(うべ)なるかなと思わざるを得ない。もっとも傍からは泰山鳴動して鼠一匹の
類と言われても致し方ないのだろう。
しかし今になってみると、そもそも議会関係者を一方の当事者として、真相解明やら自
浄作用などを求めても詮無いことなのかも知れない、と思うようになった。2月7日の北
海道新聞に、公平な調査のため、参考人招致は全会一致で決めると申し合わせているので、
会派間の意見一致を見なかったから断念したという記事を見たからではあるが・・・。
そういう意味では、千万人といえども吾往かんと自治法の制限等も何のその闇雲に特別
委員会に参入した強引な手法に脱帽、さすがに老練議員。
老練と言えば、特別委員会委員長の黒島宇吉郎氏。7月議会での口汚い新市長攻撃で、
議事録からの発言削除の議員提案がなされたいわくつきの人物と断定し、こういう人物を
委員長に据えて公平な委員会運営ができるのか、という見方に対し、筆者は、内外で注目
されている特別委員会をわたくし的思惑や怨念でどうこうするとは思いたくない。長年に
亙る議員歴等に鑑み、委員長としての手腕を期待すると敢えて論調を張ったが、結果を見
れば・・・。
さて、是非は別にして議会での一定の調査が終わったことになる今回の有料老人ホーム
問題によって、何がもたらされ、どうなっていったのか、少し触れてみたい。
まず第一に、もしブラックジャーナルと言われる情報誌が西尾正範助役を誹謗中傷する
記事を執拗に掲載しなかったら、西尾助役の年末の退職はなく、消化試合と思われた市長
選が突如暗雲漂う事態になっていくことにはならなかったはず。
マッチポンプならず、マッチマッチ(?)でないのかな、と思われるほどの情報誌によ
るまさしく執拗で陰湿な誹謗中傷、しかも品位の欠片もない記事が「一寸の虫にも五分の
魂」というか、西尾氏の心に火を点けてしまい、そういう情報誌の闊歩を許す市役所の体
質に嫌気がさし、むしろ市役所外での戦いに活路を見い出すという想定外の行動になって
いく。
ところが、そういう西尾氏を情報誌主宰者らは見くびっていた。(西尾氏自身、当初か
ら市長選を展望していたのかどうかは見解の分かれるところ。筆者は、そういう流れの中
での帰結として市長選に担ぎ出されたものと見る)
事態は動くのである。
「閉塞感と変化を求めた市民の心を揺さぶり、この際現職以外ならだれでもよいとの流れ
をつくることとなり」云々とは、選挙後の7月議会での福島恭二議員の一般質問での言葉
だが、当初は、組織力と知名度の開きに高を括って、西尾憎しで書きたてる情報誌主宰者
の真意が現職擁護に映り、あまりに品位なき文面にそれまで眉をひそめるだけであった市
民が、判官びいきも相俟って草の根、勝手連式に西尾支援に回り、なだれ現象を起してい
く、そんな構図になっていったのではなかろうか。
確かに、西尾陣営はケンカ上手であった。
「悪代官、悪徳商人、やくざの親分」に加え、情報紙主宰者を「瓦版」にたとえ大向うを
うならしたあたりは、演出プロデューサーの勝利と言っていいだろう。(もっとも、出演
承諾をしていないのに勝手に名前をつかった怨念を未だ引きずってはいるのだが・・・)
福島恭二議長(当時)同席の下、「再検討を部下に指示した」といわれる市長室でのや
りとり、が大きな焦点になっているが、筆者の体験では議長のみならず議員等から頼まれ
た案件については、たとえ端から無理だと承知していても、一応検討はする(ポーズはと
る)ものと認識している。
したがって、担当者を呼んでの聞き取りや指示(に近いこと)をすることもあるが、こ
れは外部に対しての処世術と言えなくもない。そんなことくらい、許されていいのではな
いだろうか。事実、井上市長は事の是非は承知しており、ごり押しなどしなかったのであ
る。
筆者は、むしろ市長・助役・担当部長・次長等の関係者が一堂に会しての打ち合わせが
なかったことに、不自然さを覚える。あったとしたら、このような齟齬は起こらなかった
だろうし、なかった、としたら、両者のパイプが詰まっていたことになる。それは、市民
にとって不幸なことであって、その責めは両者ともに負わなければならない。
もう一点、昨年の3月7日の小野沢猛史議員の「井上市長が問題の発端だと思っていな
い」という一般質問が今でも耳に残っている。
行政への過度な要請、介入、押し付けが議員活動という名目でなされ、そういう流れの
中で起きてきたことだったのではないかということである。市(職員)は、議員に対して
周囲が思う以上に過度な反応をしがちなのだ。
幸い、北海道新聞には、黒島委員長が「信頼される議会を目指すとともに、より公正で
適正な行政執行のため、理事者とともに取り組んでいくべきだと確認した」と結んだとあ
ったが、これを契機に一層真摯に市民の負託に応えてほしいものだ。
おそらく井上博司前市長が一番望んでいることだと思う。