NHKクローズアップ現代 清算か存続か~第三セクター処理の行方~ 平成19年10月24日
昨日(10月23日)のNHKクローズアップ現代は、「清算か存続か ~ 第三セクター処理
の行方~」と題して全国の自治体の第三セクターの現状に迫っていた。
地方自治体の財政危機を早く見つけて手遅れになる前に再建に向けた手立てが打てるこ
とを目指した「自治体財政健全化法」が今年6月成立し、2009年4月からは自治体本体が
抱える赤字に加えて、これまで見えにくかった第三セクターなど、言わば隠れていた赤字
と連結して計上しなければならなくなったことから、いま、にわかに第三セクターの借金
体質がとりあげられてきたらしい。
筆者は旧恵山町長時代、第三セクターの自己破産に、その多くの時間を費やしてきただ
けに他人ごとではないが、第三セクター出資時の収支の計算違い(見通しの悪さ)や無責
任さは別にしても、現状、凭(もた)れあいや先送りの結果であるならば、何をいまさら
慌てふためいているのかと同情する気にはならない。
とは言え、自治体自身、リゾート法等の国の政策に追随して(踊らされて)とりくんだ
面も見られるだけに、すべて自治体の責にするのはいかがなものかとも思う。(そんな泣
き言が通じないのが現実だが)
さて、筆者がとりくんだ第三セクターの自己破産の経過等については、筆者のブログ上の
・町長室気まぐれ日記:
№4「風力発電調査委員会からの答申」
№5「決断」、
№8「銀行の常識」
№14「何でまた風車を経営?」
・支所長室気まぐれ日記:
№44「民でやれることは民で!」
№49「住民監査請求!」
№51「プロとは、然もありなん!」
№62「夕張ショック」
をお読みいただければ大体のところ理解してくださるものと思うので重複はさけたいが、
自治法上では、たとえ行政(理事者)側の都合のいい資料だけをもとに議決されたとして
も(言葉を変えれば議会が騙されていたとしても可決した以上)、出資当時の理事者の責
任はあくまでも政治的・道義的なものに止まり、第三セクターの借金返済義務は全くない
という。
従って、現にその職にあるものが対応を迫られることになる。
クローズアップ現代では、第三セクターの清算が進まない理由に、第三セクターが銀行
から融資を受ける際、自治体が銀行側と損失補償契約を交わしていることをあげている。
第三セクターの事業内容が思わしくない時は、自治体が借金を返済するという契約、いわ
ば自治体が第三セクターの連帯保証人になるのである。
第三セクターを清算して銀行に一括返済を求められたら、自治体の財政は破綻、財政再
建団体に転落してしまうことになりかねない。そのことを恐れ、第三セクターの赤字を毎
年予算で補填しながら、清算を先延ばしにしてきたという。
ところが、冒頭記したように、「自治体財政健全化法」の成立により、2009年4月から
第三セクターの累積赤字を自治体の一般会計に計上しなければならなくなった。つまり、
赤字を抱える第三セクターを存続させるのか、清算するのか、自治体は苦渋の決断を迫ら
れてきているのだ。
取材された自治体の総務課長は、「言葉は悪いですけど、ごまかしてやってきたのが
ごまかしきれなくなったということなんだとおもうんですよ」と悄然として言う。
放送では、自治体の損失補償を前提にして組み立てていたが、筆者の経験から言うと
少し取材力に物足りなさを感じる。
それは、総務省から各都道府県へ出されている「第三セクターに関する指針」という
通達に全く触れていなかった点である。(支所長室気まぐれ日記№44「民でやれること
は民で!」参照)
概略抽出すると、
① 地方公共団体が出資者として負う責任はあくまで出資の範囲内(有限責任)であり、
これを超えた責任は存在しないことを、当事者間はもとより対外的にも明確にしておく
必要があること。
② 第三セクターの資金調達方式としては、事業自体の収益性に着目したプロジェクト・
ファイナンスの考え方を基本とすべきであり、これに基づく資金調達が困難である場合に
は、第三セクター方式による事業化を原則として断念すべきであること。
将来の新たな支出負担リスクを回避する観点から、第三セクターの資金調達に関する
損失補償は、原則行わないこととすべきであること。
真にやむを得ず損失補償を行う場合にあっては、その内容及び必要性、更には対象と
なる債務についての返済の見通しとその確実性について、議会及び住民に対して十分説
明し、理解を得ておくとともに、他の出資者等との関係でこれを超えた負担は存在しな
いことを対外的にも明確にしておくべきであること。
……、等をあげることができる。
まさしく、将来の新たな財政負担にならないため、損失補償はしないことを明確にし
ている。
もっとも、原則という文言が、損失補償が横行しているところのミソなのだろうが、
その場合にも相当なタガがはめられているのは明らかである。
いずれにしても、現状を見ると、考えられる範囲でのリスクマネージメントなくして
の第三セクターへの出資、まして損失補償は住民への背徳行為とさえ言えるのではない
だろうか。
放送を見ながら、「旧恵山町時代の第三セクターへの出資議決とその後の一連のやり
とりは、ヒドイもんだった」、と当時を思い出した。機会があれば触れてみたい。
の行方~」と題して全国の自治体の第三セクターの現状に迫っていた。
地方自治体の財政危機を早く見つけて手遅れになる前に再建に向けた手立てが打てるこ
とを目指した「自治体財政健全化法」が今年6月成立し、2009年4月からは自治体本体が
抱える赤字に加えて、これまで見えにくかった第三セクターなど、言わば隠れていた赤字
と連結して計上しなければならなくなったことから、いま、にわかに第三セクターの借金
体質がとりあげられてきたらしい。
筆者は旧恵山町長時代、第三セクターの自己破産に、その多くの時間を費やしてきただ
けに他人ごとではないが、第三セクター出資時の収支の計算違い(見通しの悪さ)や無責
任さは別にしても、現状、凭(もた)れあいや先送りの結果であるならば、何をいまさら
慌てふためいているのかと同情する気にはならない。
とは言え、自治体自身、リゾート法等の国の政策に追随して(踊らされて)とりくんだ
面も見られるだけに、すべて自治体の責にするのはいかがなものかとも思う。(そんな泣
き言が通じないのが現実だが)
さて、筆者がとりくんだ第三セクターの自己破産の経過等については、筆者のブログ上の
・町長室気まぐれ日記:
№4「風力発電調査委員会からの答申」
№5「決断」、
№8「銀行の常識」
№14「何でまた風車を経営?」
・支所長室気まぐれ日記:
№44「民でやれることは民で!」
№49「住民監査請求!」
№51「プロとは、然もありなん!」
№62「夕張ショック」
をお読みいただければ大体のところ理解してくださるものと思うので重複はさけたいが、
自治法上では、たとえ行政(理事者)側の都合のいい資料だけをもとに議決されたとして
も(言葉を変えれば議会が騙されていたとしても可決した以上)、出資当時の理事者の責
任はあくまでも政治的・道義的なものに止まり、第三セクターの借金返済義務は全くない
という。
従って、現にその職にあるものが対応を迫られることになる。
クローズアップ現代では、第三セクターの清算が進まない理由に、第三セクターが銀行
から融資を受ける際、自治体が銀行側と損失補償契約を交わしていることをあげている。
第三セクターの事業内容が思わしくない時は、自治体が借金を返済するという契約、いわ
ば自治体が第三セクターの連帯保証人になるのである。
第三セクターを清算して銀行に一括返済を求められたら、自治体の財政は破綻、財政再
建団体に転落してしまうことになりかねない。そのことを恐れ、第三セクターの赤字を毎
年予算で補填しながら、清算を先延ばしにしてきたという。
ところが、冒頭記したように、「自治体財政健全化法」の成立により、2009年4月から
第三セクターの累積赤字を自治体の一般会計に計上しなければならなくなった。つまり、
赤字を抱える第三セクターを存続させるのか、清算するのか、自治体は苦渋の決断を迫ら
れてきているのだ。
取材された自治体の総務課長は、「言葉は悪いですけど、ごまかしてやってきたのが
ごまかしきれなくなったということなんだとおもうんですよ」と悄然として言う。
放送では、自治体の損失補償を前提にして組み立てていたが、筆者の経験から言うと
少し取材力に物足りなさを感じる。
それは、総務省から各都道府県へ出されている「第三セクターに関する指針」という
通達に全く触れていなかった点である。(支所長室気まぐれ日記№44「民でやれること
は民で!」参照)
概略抽出すると、
① 地方公共団体が出資者として負う責任はあくまで出資の範囲内(有限責任)であり、
これを超えた責任は存在しないことを、当事者間はもとより対外的にも明確にしておく
必要があること。
② 第三セクターの資金調達方式としては、事業自体の収益性に着目したプロジェクト・
ファイナンスの考え方を基本とすべきであり、これに基づく資金調達が困難である場合に
は、第三セクター方式による事業化を原則として断念すべきであること。
将来の新たな支出負担リスクを回避する観点から、第三セクターの資金調達に関する
損失補償は、原則行わないこととすべきであること。
真にやむを得ず損失補償を行う場合にあっては、その内容及び必要性、更には対象と
なる債務についての返済の見通しとその確実性について、議会及び住民に対して十分説
明し、理解を得ておくとともに、他の出資者等との関係でこれを超えた負担は存在しな
いことを対外的にも明確にしておくべきであること。
……、等をあげることができる。
まさしく、将来の新たな財政負担にならないため、損失補償はしないことを明確にし
ている。
もっとも、原則という文言が、損失補償が横行しているところのミソなのだろうが、
その場合にも相当なタガがはめられているのは明らかである。
いずれにしても、現状を見ると、考えられる範囲でのリスクマネージメントなくして
の第三セクターへの出資、まして損失補償は住民への背徳行為とさえ言えるのではない
だろうか。
放送を見ながら、「旧恵山町時代の第三セクターへの出資議決とその後の一連のやり
とりは、ヒドイもんだった」、と当時を思い出した。機会があれば触れてみたい。
by atsushi-kudou | 2007-10-24 22:10 | 素浪人ひとりごと