令和5年7月31日付け「市民の声」―市議会の質疑内容が分からない―を投稿されました市民の方に、本ブログを介してお答えさせてもらいます。
実は、令和5年6月定例会における旧ロシア領事館の売却経過に係る質疑内容について、函館市に「市民の声」としてご意見をお寄せいただいておりましたことを11月に入るまで知らずにいました。
「市民の声」に応対する形で「函館市からの回答」がありましたが、それだけでは全体像をつかめないのではないか、むしろ一方の当事者である私から質問の真意をお伝えしなければならないのではないかと思ったのでした。
とは思いつつも、直前に控えていた12月定例会での質問準備はもとより、令和5年3月に提訴した「旧ロシア領事館の売却に係る公文書(不動産鑑定評価書)の一部非公開処分取消請求事件」の対応等で、年を跨いで本日に至ってしまいました。
最初に、このブログを読まれている方々に内容をご理解していただくため、函館市に寄せられた「市民の声」および函館市からの回答を再掲させていただきます。
【市民の声】
7月19日の市議会で、旧ロシア領事館に関する一般質問があったが、何を質疑しているか分からず、理解できたのは、不動産鑑定評価書の内容の質問に「訴訟中であり答弁は差し控える」と答弁していたことだけである。不動産の鑑定評価額は公開されているが、何を質疑しどうなっているのか。一般質問までの不動産鑑定評価書に係る経過を教えてほしい。
情報公開できない理由として、「不動産鑑定士が著作権法で非公開の別段の意思表示を示しているため公開できない」と答弁しているのは分かったが、市は、土地の所有者で不動産鑑定の依頼者でもあり、市の情報公開条例による公開が、鑑定を請けた鑑定者の著作権法の公表権より優先され、情報公開されるのではないか。函館市情報公開条例の何条に該当し、どのような解釈で情報公開を拒否しているのか。
【函館市の回答】
著作権法では、著作者からの別段の意思表示がない場合、著作者は著作物の情報公開に同意したものとみなすと規定されています。
旧ロシア領事館の不動産鑑定評価書等については、著作物であり、情報公開につきましては、著作者である不動産鑑定士から「全部非公開を希望する」旨の著作権法上の意思表示が示されたことから、公開することで、同法に規定する公表権を侵害し、不動産鑑定士の利益を侵害することとなるため、市情報公開条例第7条第1号(法令秘情報)および第3号(法人等不利益情報)に該当するものとして非公開としたところです。
市公文書公開審査会においても非公開は妥当との判断をいただいたところでしたが、これを不服として,現在訴訟が提起されている状況であります。
以上が、「市民の声」およびそれに対する函館市回答の内容です。
私が、旧ロシア領事館の売却に関して市議会一般質問で取り上げ続けておりますのは、函館市が算定した固定資産評価額では時価約1億円になるものが、3千万円と約7千万円もディスカウントされて売却された理由と、それが妥当なものか否かを明らかにすることが、市議会議員としての責務と考えているためです。
函館市は、売却価格は不動産鑑定評価によって確定したと説明されたので、その内容を質問したら何と教えられないという回答でした。その理由は、不動産鑑定評価書は不動産鑑定士の著作権法上の著作物にあたるので、不動産鑑定士が公開に同意しないかぎりできないということです。
旧ロシア領事館は、その敷地を含め市民の財産でした。市民の財産を市民の税金で鑑定評価依頼したので、その結果である不動産鑑定評価書を公開しない理由を知りたいと、教えて欲しいと言ったら拒否されたのでした。
それで、私は、函館市に対して当該不動産鑑定評価書の公開請求を行ったところ「非公開決定」になったため、函館市公文書公開審査会に審査請求を行いましたが、これも同様に「非公開は妥当」との判断に至ったことから、司法の判断を求め訴訟を提起したものです。
函館市は、著作者である不動産鑑定士から、「上記書類(不動産鑑定評価書を指します。)は高度な個人情報を含むため、全面開示に関しては、妥当でないと考えます。」という理由で、「全部非公開を希望する。」旨の著作権法上の意思表示が示されたことから、公開することで、同法に規定する公表権を侵害し、不動産鑑定士の利益を侵害することになるという見解です。
しかしながら、函館市情報公開条例第9条で「実施機関(函館市を指します。)は,公開請求に係る公文書に非公開情報(第7条第1号に該当する情報を除く。)が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、公開請求者に対し、当該公文書を公開するものとする。」と、公益上の理由による裁量的公開の規定を設けていますので、旧ロシア領事館という歴史的遺産の売却で市民の関心が高いことや約7千万円もディスカウントされ売却価格が決定された経過を明らかにするのは公益性が高いことなどを司法の場で主張して、不動産鑑定評価書の公開を求めています。
なお、森元不動産鑑定事務所は、平成28年5月9日付けで八雲町と「八雲町固定資産税標準宅地(熊石地域)鑑定評価業務」の委託契約を締結し、平成29年3月15日付けで成果品として不動産鑑定評価書を交付しております。このため、令和5年1月29日付けで八雲町に対して、当該不動産鑑定評価書の公開請求を行ったところ、令和5年2月7日付けで個人の印影および不動産鑑定事務所の代表者の印影を除き、公文書の一部公開決定がされました。
森元不動産鑑定事務所の森元浩不動産鑑定士は、旧ロシア領事館の不動産鑑定評価と同じ年度に実施した八雲町の不動産鑑定評価書に対しては、公開に同意をしているにも関わらず、函館市の旧ロシア領事館の不動産鑑定評価書については、著作権を行使して公開を拒否しているものです。
これが、ご指摘のあった「議会における一般質問までの不動産鑑定評価書に係る」おおまかな経過ですが、次の2点が背景にあるため、質疑の論点が複雑になっているのではないかと思います。
まず1点目は、函館市は、平成28年7月28日付けで有限会社森元不動産鑑定事務所代表取締役森元浩氏に旧ロシア領事館の不動産鑑定評価を依頼しましたが、当該有限会社は、その2年前の平成26年8月29日に解散を決議し、既に清算結了しておりました。
一方、森元浩不動産鑑定士は、解散決議と同日付けで個人事務所の森元不動産鑑定事務所を設立していることです。なお、個人事務所の所在地、電話番号は従前の有限会社森元不動産鑑定事務所と全く同じです。
つまり、函館市は、既に存在しない有限会社森元不動産鑑定事務所に不動産鑑定評価を依頼したものですが、その時点では、有限会社の解散決議と同日付けで設立登録した個人事務所として、有限会社森元不動産鑑定事務所と全く同じ事務所で、同一の不動産鑑定士が代表者になって不動産鑑定業をしていたことです。
これを函館市は、事務所の所在地、電話番号および代表者が同一であることから、有限会社から個人事務所への単なる名称変更と捉えていたようですが、不動産の鑑定評価に関する法律第22条で「不動産鑑定業を営もうとする者は、(中略)、その事務所の所在地の都道府県に備える不動産鑑定業者登録簿に登録を受けなければならない。」と規定されておりますので、解散した有限会社森元不動産鑑定事務所と森元不動産鑑定事務所とは、登録行為を経ることで全く別の不動産鑑定業者ということになります。個人事務所であっても都道府県の不動産鑑定業者登録簿への登録が必要になるので、単なる名称変更とは異なります。
森元浩不動産鑑定士は、有資格者として不動産の鑑定評価に関する法律に精通しているわけですから、函館市から有限会社森元不動産鑑定事務所への不動産鑑定依頼書を受け取った時点で、速やかに理由を述べて函館市に返却すべきでしたが、これを怠り、個人事務所の森元不動産鑑定事務所への不動産鑑定依頼書として取り扱ったものです。
2点目は、不動産鑑定評価書は、一般に不動産鑑定士が作成し、依頼者に交付するものと思われがちですが、不動産の鑑定評価に関する法律第39条第1項で「不動産鑑定業者は、不動産の鑑定評価の依頼者に、鑑定評価額その他国土交通省令で定める事項を記載した鑑定評価書を交付しなければならない。」と、同条第2項で「鑑定評価書には、その不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士がその資格を表示して署名しなければならない。」と、それぞれ規定しています。
第1項から不動産鑑定評価書は、不動産鑑定業者のみが、株式・有限会社名や個人事務所名で依頼者に交付することができるもので、第2項から不動産鑑定士は、不動産鑑定評価書に署名することが求められるだけです。
これも函館市は、不動産鑑定士であれば不動産鑑定評価書を作成し、依頼者に交付することができると理解していたようです。したがって、函館市は、有限会社森元不動産鑑定事務所の森元浩氏と森元不動産鑑定事務所の森元浩氏は同一人であるため、不動産の鑑定評価依頼を受けていないにも関わらず、個人事務所の森元浩氏が不動産鑑定評価書を作成し、交付してきたものを何の疑問もなく受け取り、鑑定手数料を個人事務所の森元浩氏に支払っています。
1点目で述べたとおり、森元浩不動産鑑定士は、既に自らが清算人となって解散した有限会社森元不動産鑑定事務所への不動産鑑定評価依頼であることを知りながら、これを依頼者の函館市に返却することなく、全く別の個人事務所である森元不動産鑑定事務所として不動産鑑定評価書を作成し交付したもので、函館市も同一人の森元浩不動産鑑定士から交付されたことから、そのまま受け取り鑑定手数料を支払ったものです。
これでは、個人事務所の森元不動産鑑定事務所が交付した不動産鑑定評価書は、函館市からの依頼がないのにも関わらず作成されたものになりますので、不動産の鑑定評価に関する法律第39条第1項「不動産鑑定業者は、不動産の鑑定評価の依頼者に、鑑定評価額その他国土交通省令で定める事項を記載した鑑定評価書を交付しなければならない。」の規定に反することになります。
このように、函館市は、平成28年7月に、旧ロシア領事館の鑑定評価を既に解散して実体のない有限会社森元不動産鑑定事務所に依頼したことや、不動産鑑定士が不動産鑑定評価書を発行するものと理解していたために、その問題点の質問を続けるうちに次第に答弁の辻褄が合わなくなってきており、「詳細につきましては、現在裁判中のため答弁は差し控えたい」と繰り返さざるを得なくなっています。
特に、令和5年9月市議会定例会での私の一般質問に対して、平成28年7月に有限会社森元不動産鑑定事務所に不動産鑑定を依頼した文書は、本来、依頼先を森元不動産鑑定事務所とすべきであったのを「誤記」があったとして、辻褄を合わせようとしています。実に不動産鑑定依頼の文書を決裁し、決裁書のとおり実施してから7年が経過して、初めて「誤記」という議会答弁を繰り出してきたのです。
函館市は、議会の場では繰り返し答弁に終始するばかりで、それでは質問時間を浪費するだけですので、令和5年12月15日付けで「『誤記』であることを明らかにする文書」の公開請求を行ったところ、平成28年7月28日決裁の有限会社森元不動産鑑定事務所あての依頼文書と平成28年10月25日決裁の森元不動産鑑定事務所を債権者とする支出負担行為伺書が公開されました。
不動産の鑑定評価に関する法律第39条は、「不動産鑑定業者は、不動産の鑑定評価の依頼者に、鑑定評価額その他国土交通省令で定める事項を記載した鑑定評価書を交付しなければならない。」と規定していますから、依頼文書の業者名と不動産鑑定評価書を作成した業者名が異なっていては辻褄が合わないことになります。まるで、羅宇(煙管)の部分がない「キセル」の雁首と吸口を出してきて、これが「キセル」だと主張しているようなものです。
したがって、この公文書公開決定を取り消し、改めて請求の趣旨に沿う文書を特定のうえ、全部公開するよう函館市公文書公開審査会に対して審査請求を1月18日付で提出しました。つまり、雁首と吸口をつなぎ「キセル」となる羅宇(煙管)の部分の文書を特定し、公開するよう求めました。
最初に述べましたように、私は、旧ロシア領事館の売却価格が時価換算すると約1億円になるものが、3千万円と約7千万円もディスカウントされ売却された理由と、それが妥当なものか否かを明らかにすることが、市議会議員としての責務と考えております。
それで、旧ロシア領事館に係る土地および建物の不動産価格について、もう少し詳しくご説明いたします。その不動産価格は、函館市の固定資産税仮評価額から逆算すると1億円弱の評価になるものと推計されます。(一般に、固定資産税仮評価額=不動産鑑定評価額☓0.7とされており、平成27年度に函館市が評定した固定資産税の仮評価額は土地が69,389,620円、建物が3,397,462円ですので、土地の不動産鑑定評価額=69,389,620/0.7=99,128,029円と見込まれます。)
しかし、平成28年9月に函館市が作成依頼した不動産鑑定評価書では、土地の鑑定評価額が50,000,000円と固定資産税の仮評価額よりも大幅に下回った評価が示されております。
その後、令和2年に依頼した不動産価格変動意見書では土地が29,426,000円、建物が3,440,000円とさらに大幅に下落した評価が示されています。
最終的に、函館市は、令和3年3月1日付けで名古屋市の株式会社ソヴリンと旧ロシア領事館に係る土地および建物を30,000,000円で売却する契約を締結していますが、当該不動産鑑定評価額が年を追うごとに大幅に減額されていった理由および評価額の算定方法が不明なことから、これを明らかにすることは極めて公益性が高いものと考えています。
また函館市は、1億円弱の評価が推定される不動産を議会の議決を得ることなく30,000,000円に減額して売却した理由を市民に説明する責任があります。当該不動産鑑定評価書を一切誰にも見せずに、資格を有する不動産鑑定士が作成したものだから、内容は正しいと主張し続けています。これで分かりましたとは到底ならないので、市民が納得する理由が示されるまで追求しなければならないと考えております。
なお、売却に至った経過を検証する過程で、令和元年9月3日付けの「市長協議要旨(外国人材、旧ロシア領事館)」という公文書が公開されました。
そのなかで、当時の工藤市長から企画部に対して、
・ 作家の谷村氏と(土地・建物をまとめて買い取りたいという株式会社ソヴリンの)村瀬社長とは、どういう繋がりなのか
・ 価格はいくら位になるか?協力してくれるなら無償でもいいくらいだが。
・ やってくれるというのであれば基本的には悪い話ではない。
・ 耐震調査も含め、(売却先を決定するプロポーザルの実施等)認めてかまわない
という質問や指示があったことが判明しました。
函館市は、令和2年2月20日付けの北海道新聞朝刊に「旧ロシア領事館売却へ」という報道発表が行われる前から、購入を希望する事業者と既に実質的な協議を進めていたことになりますので、業者選定の経過が公平公正なものであったかを検証することも是非必要であると考えます。
しかしながら、議場での発言は、答弁を含めて1時間に限定されていることから、毎回時間切れの状態で終わってしまうため、議会中継をご覧になっている市民の皆様には、「何を質問しているのかよくわからない」というご感想を持たれたものと思います。
質問にあたっては、情報公開請求で入手した資料や、独自に調査した資料をもとに議論を展開するようにしておりますが、的確な答弁が返ってこないことが多いため、よりわかりやすい議論となるよう質問の内容や表現に工夫を重ねながら、この問題を決して風化させないよう議会の場で引き続き事実解明をしてまいりたいと考えております。
旧ロシア領事館に係る議会質疑の経過につきましては、このブログに引き続き掲載してまいりますので、ご一読いただきますようお願いいたします。
改めまして、私から質問の真意をお伝えすることが遅れましたことをお詫び申し上げますとともに、今後とも旧ロシア領事館に限らず、市政全般について市民の皆様のご指導を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
また、是非、皆様からご意見や情報を下記の連絡先まで寄せていただきたくお願いいたします。
もちろん、ニュースソースを明かすことは絶対にありませんので、ご安心ください。