人気ブログランキング | 話題のタグを見る

漁業者にとっての国際水産・海洋総合研究センター 28年12月議会    ≪29年1月18日≫

 最近の海の状況がおかしい。魚も海藻類のコンブもひどい状況です。

 そういう中、漁業者にとって「国際水産・海洋総合研究センター」がどういう役割を果たしているのか尋ねてみました。

 
 安全航行に関する技術開発は別にして、採る技術、いわゆる生産性向上がための技術開発はもういいのではないかと思っています。

 資源は無限ではない。持続的に漁業を続けていくための資源管理はもとより、増養殖技術のさらなる向上こそが求められているのではないかと考えます。

 
 そういう意味では、見事な官僚答弁に終始、具体的な成果ゼロというのが率直な感想でした。


***********************************


◎工藤 篤議員

 平成15年3月、「函館国際水産・海洋都市構想」が策定され、本構想の中心となる「国際水産・海洋総合研究センター」は約45億円の建設費をかけて平成26年6月に供用開始されました。

 建設費以外にも、平成27年度決算ベースで言えば、使用料が13,843千円、委託料が77,239千円ですから、運営に年間63,396千円かかっていることになります。


 以来2年半経ちました。まだ、2年半しか経っていないとも言えますが、現在どのような取り組み、また成果等が表れているのか、お聞かせ願えればと思います。


○企画部長

 国際水産・海洋総合研究センターには,函館水産試験場のほか,北海道大学水産科学研究院や北方生物圏フィールド科学センター,未来大学,函館高専の4つの学術研究機関と研究開発型の民間企業6社、合計11の機関、その他に指定研究機センターの指定管理者となっております国際水産海洋都市推進機構が入居しており,函館水産試験場では水産資源のモニタリングや資源管理技術の開発などを,北海道大学においてはイカ類の繁殖についての研究や生物資源変動のメカニズムの解明に関する研究を,未来大学では海洋観測センサーの開発や海洋観測網の構築に関する研究を行っておりますほか,民間企業では,磯焼け防止や藻場造成に係る研究,海藻の増養殖技術の開発,海藻が付着しにくい塗料の開発などを行っているところであります。


 また、国際水産海洋都市推進機構では地元の水産業の課題を研究に繋げるため、いわゆる浜もコーディネーターを採用し、漁業者の声を直接伺い、入居機関に伝えている他、推進機構を管理機関とする入居機関による共同研究チームを立ち上げ、外部から研究資金を獲得し、沿岸漁業者向けの魚種などの判別が可能となる低価格で高性能な魚群探知機の開発を行うと共に、安定したコンブ養殖漁業の実現に向け研究資金獲得に向けた活動を行っておりまして、こうした活動により水産海洋分野の研究拠点を目指し、学術的な立場から地元水産業への貢献に努めているところであります。


 さらに、イカ資源評価と予測に関する講演会や研究成果発表会など、多くのシンポジウムや学会が開催されておりまして、毎年多くの水産業の関係者が来場しているところでございます。


◎工藤 篤議員

 ご答弁の函館水産試験場、北海道大学水産科学研究院や北方生物圏フィールド科学センター、未来大学、函館高専の4つの学術研究機関と研究開発型の民間企業6社は、元々別の箇所にあったのが集約されたものと理解しているのですが、それでよろしいですか。


○企画部長

 入居機関のうち,函館水産試験場につきましては,湯川にあった施設が老朽化し,研究環境の拡充と北海道大学をはじめとする関係機関との連携が図りやすくなることを期待し,研究センターに全ての機能を移転したものであります。


 また,北大の水産科学研究院につきましては,海水が利用できる大型実験水槽や実習船が接岸できるふ頭を有する研究センターで新たな研究活動が展開できることを目的に,研究拠点を新たに設置したものでありまして、北大の北方生物圏フィールド科学センターにつきましても,水産科学研究院と同様に北大の水産学部の建物内から,研究環境の拡充を目的に,全ての機能を研究センターに移転したものでございます。


 次に,公立はこだて未来大学につきましては,新たに「マリンITラボ」を創設し,水産海洋関連の3つの研究室が入居したものでありまして,函館高専につきましては「海洋工学ラボ」を創設し,海洋工学に関する研究室が本年から新たに入居しているものであります。


 また,民間企業6社については,研究センターのオープンにあわせ,函館に新たに進出した企業が3社ありまして,残る3社につきましては,市内にあった企業が機能拡充を図るため入居したところでございます。


◎工藤 篤議員

 分かりました。関係機関との連携、海水大型実験水槽等を活用しての新たな研究活動等々、そういう意味では単なる集約ではなく集積と捉えることができ、これまでの個々の研究、活動が集積されたことにより新たな可能性、視点が探られているものと期待しております。

 そこで、私ども素人に理解できるような顕著な事例がありましたらお知らせください。

ただ、まだ2年半ですから基礎研究がそう簡単に日の目を見ることはないと理解しておりますので、そういう場合は現在進行中だけで結構でございます。


○企画部長

 先程もご答弁申し上げましたけれども,入居機関による共同研究チームが外部資金を獲得し,沿岸漁船向けに魚種毎の資源量や魚体長を測ることができる魚群探知機の開発に取り組んでおりますほか,気候変動に左右されにくいコンブ漁業を目指し,沿岸漁業の持続的活用の一助となるよう,入居機関による研究チームを立ち上げ,コンブ種苗の陸上での長期保存技術や,母藻となるコンブの成熟制御技術,コンブの乾燥工程の効率化などをテーマに,研究を組み立てて,国への提案を行うなど,集積した学術機関の知見を活用した研究事業のコーディネートに取り組んでいるところでございます。


 水産・海洋の分野には未解明な部分も多く,全ての課題が入居機関の知見により解決できる訳ではございませんが,漁業者が抱える技術的課題を少しでも改善に向けることができるよう,学術機関などが持つ科学技術の観点から,地域の産業全体の活性化をめざしてまいりたいと考えております。


◎工藤 篤議員

 ご答弁の母藻となるコンブの成熟制御技術とはどういうものなんでしょうか。


○企画部長

 近年,天然コンブの成長の遅れによりまして,養殖コンブ漁業に必要な母藻の成熟が遅れ,適切な時期に採苗できないといった問題が発生しております。


 また,採苗時期の遅れは,その後のコンブの養殖のスケジュールにも大きな影響を及ぼしますことから,必要な時期に成熟母藻を確実に確保することが, 課題となっております。


 こうしたことから,天然コンブの成熟を促進する培養条件の解明などによりまして,種苗生産現場における室内培養へ向けた技術の開発をめざし,成熟した母藻を,適切な時期に確保できるよう技術開発を行うものです。


◎工藤 篤議員

 まあ研究開発中という理解でよろしいですね。

 浜のコーディネーターは、いわゆる浜と研究機関との繋ぎ役と受け止めましたが、具体的な内容と成果をお知らせください。


○企画部長

 相談を受けた事例としては,漁獲したコンブの表面に「毛」のようなものが付着し,作業の際に取り除くのが大変で,発生する粉塵を吸い込むと,健康にも害をおよぼすことから,除去作業を省力化,効率化できないか,との要望を受けまして,関係機関と協力して除去装置を試作し改良を重ねるなど,漁業者からの要望により,これを解決するための取り組みを行っております。


 また,コンブ乾燥工程に関しては燃料費が高額でありますことから,省エネによる低コスト化の要望を受け,道立工業技術センターなどとコンブ乾燥機の改良に取り組んでおります。

 
 さらに、藻場の磯焼けによるコンブ幼体の定着不全、あるいは大時化による養殖コンブ容体の流出,ミツイシコンブの枯死,コンブの芽落ちなど,すぐには改善が難しい相談もいただいておりますけれども、研究センターの入居機関がそれぞれ連携をし共同研究に向け取り組んでいる事例があるところでございます。


◎工藤 篤議員

 ミツイシコンブは養殖を指しているのだと思いますが、枯れ死ですか、また、コンブの芽落ちなどは、この数年新たに生じてきたもので、減産の大きな要因となっていますが、その他のものについては、コンブ養殖が企業化されてから、凡そ40年ほど経つのでしょうか、言ってみれば当初からの課題でありました。


 今頃になって対策をというのも、遅きに失した感がないでもありませんが、ぜひ光明が見えることを期待しております。

先ほど農林水産部長がおっしゃっておりますが、イカ漁のかつてない不漁、スケソウ、ホッケなどの水揚げの減少を始め、比較的安定しているといわれる養殖コンブも地域によっては、芽落ち、穴あきが拡がって裾から腐れ落ちるなどで減産、加えて天然マコンブは年明け早々の時化、高波によって海底がさらわれたのか、盛漁期になっても成コンブがほとんどみられないという事態になりました。


 無いものは採れない訳でございます。

 因みに、今年度のJFえさんを例にとると、天然マコンブの生産量は10,351㎏、これは昨年比約94%の落ち込み、6%に過ぎなかったのでした。正に壊滅状態だったといっても過言ではありません。

 
 ご案内のように、天然マコンブは2年目の夏が成コンブとして収穫されますが、突然2年生になるのではなく、簡単に言えば親コンブから発生した遊走子が海底の基盤に着床し、発芽してコンブの赤ちゃんになり、1年生コンブ、2年生コンブとして成長します。従って、盛漁期の夏に1年生コンブが見られなければ、翌年も不漁となります。


 そこで、再来年の1年生コンブの着床を担保するためには、いわゆる母藻を確保しなければなりません。

 しかし、今のままの着床密度のまま推移するとしたら、生まれいずる総体数が減少していくことは必然となります。

 もちろん、自然界のことですから、私が危惧するようなことはなく、思った以上に回復するかも知れませんが、生産量が前年比マイナス94%、6%しかなかったというのは、かつてこのような記憶がなく、異常事態と判断せざるを得ません。

研究機関として、このような事態をどのように把握しているのか、また、今後どのように対処していったらいいのか、お考えがあればお聞きしたいと思います。


○企画部長

 研究センターとしては,水産・海洋に関する研究機関等の入居型の研究機関ということでございまして、センターとしてということよりも入居されている研究機関の中でということになろうかと思いますけれども,指定管理者となっております函館国際水産・海洋都市推進機構が,入居機関をはじめ,関連する研究機関や企業,さらには漁業者とのコーディネート機能を発揮することで,地域経済の発展に寄与することをめざしている訳でございまして,今年のコンブの状況というものは,非常に憂慮すべき事態と捉えておりまして,研究センターの入居機関で構成する共同研究チームによる,コンブ養殖に関する研究プロジェクトでは,天然コンブが採取できない場合に備えたコンブ優良株配偶体の長期保管技術の開発や,あるいはコンブ育成環境のモニタリング技術の実証などについても外部資金を何とか獲得をして研究を進めていこうということで努力をさせていただいているところでございます。


筆者註:コンブ育成環境のモニタリング技術

     モニタリングとは「環境の状態や汚染の状況などを、常に監視・観察して記録すること」を言います。従ってここで
     はコンブの育成環境。コンブ種苗や幹綱等への着生状況、害虫の発生、海水温や汚濁等の海の環境等も含め、
     総合的に監視・観察することを言うのではないかと思います。

◎工藤 篤議員

 母藻の研究も確かに必要なんでありますけれども、もちろんこれは第一義には漁業組合が判断しなければならないことだと思いますが、前年比94%の減ということはほとんど壊滅状態ということで先ほど申し上げましたが、次年度以降のことを考えた場合は、それを採らないで母藻として海に残していくということも含めて考えていかなければならないのではないかなというふうに思ったりもしております。


 しかし、生産者は目の前にあるのものは採りたいということになりますので、ぜひその辺の、研究機関からの指導助言等も含めてお考えいただければと期待をして、この項は終わりたいと思います。


by atsushi-kudou | 2017-01-19 09:13  

<< 遊休市有地を活用したエネルギー... タイムライン-防災行動計画 2... >>